web3業界の今と未来予測

日本のweb3ビジネスを推進するためのコミュニティであるNFT東京。その会を様々な形で支援するアドバイザーボードメンバーを務める博報堂DYメディアパートナーズの安本氏にインタビュー。まだわからないことや課題も多いweb3の今と未来予測について伺いました。

NFT東京を通して見えた、web3の変化

2021年夏以降、ジャック・ドーシーのツイートがNFTで販売されたり、CryptoPunksなどのNFTアートが高額で落札されたりしたことで、メディアなどからも注目を集め、いわゆるバズりのフェーズを迎えていました。その流れの中、2021年年末にNFT東京の立ち上げについてお話を伺いました。

2021年3月に開催された第1回のサミットは、初回にもかかわらず海外からのスピーカーもかなり登壇され、国内でも有識者の方が集まっていました。

当社のNFTへの取り組みもはじめたところでした。初期段階ではあったものの、「PLAY THE PLAY」というJリーグの公式動画トレーディングカードをNFT化するビジネスをローンチしたタイミングでした。また、アニメコンテンツに特化した NFTマーケットプレイス「animap」を構想していた段階でした。



NFT東京の初回は、ちょうどNFTの高額売買が話題となった直後でしたが、セッションでは投機的なものだけでなく本質をついたNFT、web3全体の話がされていたように思います。

セッションでは、初代デジタル大臣の平井卓也さんや伊藤穰一さんが政府とweb3という観点でお話されていたりもしました。そういった様々な観点から、NFTやweb3全体を考察し語り合える場で、私自身もとても勉強になりました。

第2回は、コンテンツの内容は、政策課題の認識を深めつつ、企業による実践的な話や事例も出てきました。草野絵美さんが手掛けるギャルバースのような、NFTを活用したクリエイターエコノミーのお話もありました。個人的には、NFTが普及する過程において、生活者総クリエイター的な文脈も含まれてたのではと感じました。会の全体としては、スピーカーや参加者も倍以上になっていました。

NFTの課題と解決策

NFTに関しては、投機的な側面が多く取り上げられていますが、それは本質ではありません。web3、ブロックチェーン技術を活用し、DAO、ソーシャルトークン、DeFiなどインフラとしてビジネスをしていくという方が重要な論点ではないかと考えています。

進化が著しく、スピードも早いweb3ですが、課題も山積みです。現に、NFT東京で話されていた課題は、実社会でまだ解決されていないものも多いです。例えば、税制の問題は一筋縄ではいかない複雑な課題です。現状、日本国内では税金が高く、暗号資産での資金調達や上場に課題があります。

また、仮想通貨の価格も暴落していたり、OpenSeaやNBA Top Shotなどでの取引価格も下落傾向にあり、「冬の時代」といわれている現状もあります。2021年夏位から続く一種の祭り騒ぎが少し落ち着いてきています。

ただ一方で、ハイプサイクルを是とするのであれば、減滅期の後に啓蒙期があり、やがて安定的に収益が社会的にもたらされる時期がやってくることが予想されます。そういった観点からみると、今は仕込みの時期でしょう。試行錯誤を繰り返しながら、NFTがweb3時代にもたらす新しい価値を追求する中で、どのようなサービスやプロダクトを開発すればよいのか考える時期。今、必要な投資の取り組みをやめてしまうと、今後一気にweb3ビジネスが立ち上がってくるときに市場にはもう参入できなくなってくる可能性もあるとみています。

企業がweb3事業に参入する必要性とは

企業のweb3参入については、まだ正解がありません。それでも、webに携わってきた人は、webの歴史を振り返れば、今がweb3時代に備えて試行錯誤を繰り返しながら、それぞれの持ち場でビジネスを立ち上げるタイミングだと認識している人が多いように見受けられます。

Web1.0、Web2.0が社会的実装を完了したのは、それぞれある一定の年数を要してきました。その歴史を繰り返すとすれば、web3も今後10年単位で実装が進んでいくでしょう。まだ不確実な要素もあるものの、確実に実装されていくのではとみています。

弊社にもweb3参入についての問い合わせが増えています。弊社のNFTプロジェクトを活用したものから、新たなメタバース上でのマーケティング施策など様々です。

人々の生活が大きく変わるとなると、BtoC企業にとってはフィジカルとバーチャルの両方の世界での企業活動やサービス提供が必要になると思いますし、これまで以上にコンテンツや商品といったいわゆる自社のIPをどのように活用していくかという視点で、トライアンドエラーをしながら模索していくことが今必要なのでないでしょうか。

現時点で提供を開始したソリューションもありますが、他社がすでに参入している分野も多いので、我々の強みを活かしたweb3ビジネスとは何かを模索している最中です。その一環で、市場予測の調査・研究も行っています。

2040年にどうなっているか

当初は、この先3年位の短期未来に照準をあわせた提言研究をしていましたが、web3の短期間での著しい発展をみて、より長期の視点が必要なのではと感じ、2040年にはどのような状況になっているか、というテーマで調査をしました。(*1)

この調査では、あえてweb3やNFTという言葉は使わず、より大きな視点で考えました。その頃には、生活者のライフスタイルは根本的に変化しているのではと考えています。バーチャルとフィジカルの垣根は完全になくなっていて、人々の働き方も、AIのような先端技術が仕事を補佐してくれるといった大きな変化があるのではと考えています。技術発展という観点では、AIが人のクリエイティビティを支援してくれるような時代がやってくると思います。

少し私の年代からみたコメントですが、このレポートは結構納得する点が多いです。というのも、私はデジタルネイティブ世代ではありませんが、今はデジタルのない生活は想像できません。買い物、情報取得、友人との繋がりといった生活におけるあらゆる事がデジタルなしには成り立たないほどにテクノロジーが発展したのを身をもって体感してきました。そういった経験からも、これから新しい時代が訪れる、と感じています。

(1*) メディア研究所の2040年予測: https://mekanken.com/2040project/

来るweb3時代に備えた施策

弊社もweb3時代に向けた様々な施策に取り組んでいます。PLAY THE PLAYやanimapなどがその代表です。現時点では、シンプルにデジタルコンテンツを販売し、NFTとしてオンチェーンで管理ができるようになっています。

web3時代における日本の生活者のインサイトは、まだ明確ではないものの、単純にNFTデジタルアセットを売買することが真の価値ではないのではと思っています。NFTという技術が真ん中にある議論ではなく、やはりデジタル世界での新しい経済圏の一部と考えるほうが的確だと思っています。

NFTをもつことで生活者にどのようなメリットがもたらされるのかをもっと深く考える必要があると思っています。今までとは違うスポーツファンとの関わり方、クリエイターとコンテンツホルダーとの関係性の変化など、生活者を中心に考えたweb3活用が必要です。弊社はこれまで生活者ドリブンで考えてきましたが、web3も生活者が幸せになるための活用方法を考えていきたいと思っています。

■Hakuhodo DY Play Asset

https://play-asset.com/
博報堂DYメディアパートナーズグループのNFT(Non-Fungible-Token/ブロックチェーン技術)ビジネスにおける戦略立案、プラットフォーム開発、外部マーケットプレイス連携、マーケティングやクリエイティブ、法規制対応、今後のメタバース展開など新たなサービスやプロダクトを専門チームとして創出していくプロジェクト活動です。

■PLAY THE PLAY

https://play-the-play.com/
「熱狂のテイクアウト」をコンセプトに、プロスポーツ競技団体や放送局の有する映像コンテンツを活用し、デジタルコンテンツ(グッズ、アイテム、トレカなど)として提供する独自のプラットフォームです。試合の興奮や感動を唯一無二のNFTコンテンツとして保有できるようにすることで、プロスポーツとファンの絆を強固にすることを目的としています。スポーツ競技団体や放送局などが制作・保有する映像を活用したNFTコンテンツの販売や二次流通(個人間の売買)、暗号資産での購入の仕組みの構築、ユーザーに関連するデータやトークングラフなどを活用したマーケティング、ECをはじめとしたオンラインビジネスとの連携、ファンクラブなどと融合したファン・エンゲージメントを強化する取り組みに寄与する機能の実装を目指してまいります。

■animap

https://animap.io/
博報堂DYミュージック&ピクチャーズが運営するパブリックチェーンを活用したNFT マーケットプレイスです。主事業であるアニメを中心に、NFT 事業に 取り組みたいIP ホルダー/企業のパートナーとしてNFT 事業推進を支援し、様々なジャパンコンテンツNFT を取り扱います。NFT 事業を通して、NFT×体験 で広がる新たなエンタテインメントの在り方を模索・提供することをミッションに掲げ、今後様々なIP ホルダーや企業、クリエイターやメディアとコラボレーションし、デジタルコンテンツの開発、統合プロデュースを行い、ジャパンコンテンツNFT をグローバル含めたファンに届けていきます。

スピーカープロフィール

安本純毅

イノベーションセンター長
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ

慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了後、1989年に博報堂入社。2015年に博報堂DYメディアパートナーズへ。
入社以来、人事制度改革、経営戦略策定、M&A、関連会社の設立など、博報堂DYグループの組織変革に携わる。
2019年より、イノベーションセンター長として新規事業開発、メディア・コンテンツ事業に関する先端技術・ビジネスの研究、業務プロセス改革の3領域を統括。2021年からは、博報堂の新規事業開発組織 ミライの事業センターを兼務。
2000年にUCLA Anderson School of ManagementにてMBA取得。

※本記事は、Pivot Tokyoに掲載されたインタビューの転載です。元記事はこちら

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